HIFUとは?
年齢とともに皮膚のたるみが気になってきた、という人は多いのではないでしょうか?
一度たるんでしまうと、大がかりな治療をしないと治らないと思っている人もいると思いますが、実はより手軽に受けられる治療法があります。
その一つが「HIFU(ハイフ)」です。
どんな治療法なのか、その効果や持続期間などをご紹介していきます。

ハイフ(HIFU)とは、高密度の超音波エネルギーを肌の一定の層へピンポイントに照射し、熱エネルギーを発生させる治療(またはその技術)のことです。
「High Intensity Focused Ultrasound」の略称で、頭文字を取ってハイフ(HIFU)と呼ばれています。
日本語に直訳すると、高密度焦点式超音波と呼ばれています。
医療の世界では、おもに前立腺がんの治療に用いられており、メスを使わずにがん細胞を破壊することができるため、患者の負担を軽減できる治療として利用されています。
一方、美容医療においては、ハイフの技術を応用したたるみ治療が行われています。では、どのようにたるみにアプローチしていくのでしょうか。その効果を知るためにも、まずはハイフでたるみ治療ができる原理や、その効果、そもそもたるみが生じる原因について順番に説明していきます。
ハイフの原理
ハイフは一点に超音波を集め、照射部位を瞬間的に高温にする技術です。
虫眼鏡やレンズで太陽の光を集める原理を用いています。
上記の原理を使い、肌の内側だけに熱損傷を起こさせ、周りの細胞へのダメージを抑えて効果的な治療が可能です。そのため大きなダウンタイムはなく直後からお化粧可能な治療です。
たるみの原因とハイフのアプローチ

私たちの皮膚は、外側から表皮、真皮、皮下組織という順に層を成していて、その下には表情筋などの筋肉層があります。この中で、たるみに関係している組織がどこかというと、実は、一つではありません。真皮や皮下組織、筋肉層のそれぞれが、たるみの発生に関係しています。肌の骨に近い内側の部分部分から順番に説明します。
①筋膜のゆるみ
筋肉層では筋力の低下がたるみの原因になります。手足の筋肉などと同じように、顔も、加齢によって筋力が低下していきます。すると、筋肉より上にある皮膚の組織を支える土台の力が弱まって、たるみを引きおこします。ハイフではこの筋肉層と皮下組織(ほとんどが脂肪の層)の間にある、筋膜にまで熱を加えることで、肌の深い部分から引き締めることが可能です。
筋膜とは、筋繊維の膜のことです。少し難し医療用語ですが、筋走行(筋肉の走り方)に沿って筋膜は存在します。顔一面にネット状の筋繊維の膜がある状態です。

これに沿って筋膜があり、筋肉や筋膜が衰え緩んでいくことがたるみにつながるのです。
筋膜へのアプローチ

ハイフ治療では筋膜がある深い層をめがけて、ピンポイントで熱エネルギーを加えられます。
そのため、熱の温度がある程度の温度であれば、即自的に引き締まりを実感できると言われています。
簡単な例ですと、「焼き肉」をイメージしてみてください。肉に熱を加えると、肉がぎゅっと収縮しますよね。かなり大雑把な例ですが、熱を加えて引き締まるというイメージだけでも持っていただけたらと思います。ハイフでは筋膜に熱を加えることで、筋膜がタンパク変性するため、即自的な引き締め効果が期待できます。ただし高熱であればある程良いわけではありません。それぞれの機種によってピーク熱の高さや照射スピードは異なってきます。術者の技術に加えてピーク熱の高さや照射スピードの違いが効果の差になって現れます。また別の記事で機種ごとの違いを説明します。
②皮下組織の重み

皮下組織はおもに脂肪でできているため、肥満や加齢にともなう代謝の低下などによって脂肪が増えると、重力で皮膚もたるみやすくなります。
ハイフはたるみを改善するための治療ですが、機種によっては顎下の脂肪を燃焼するための専用カートリッジがあります。顎下の脂肪を燃焼することができるのもハイフ治療の特徴です。
その他にも脂肪を減らす治療はたくさん種類があります。どの箇所の脂肪なのか?どの程度の脂肪の量なのか?どれくらい減らしたいのかによって適した治療は異なります。
ここでは脂肪燃焼を専用とした医療用ハイフのメカニズムを紹介します。
脂肪層へのアプローチ

ハイフの熱照射によって脂肪細胞を溶解していく作用があります。
脂肪層の破壊
脂肪がある層に熱エネルギーを集中して照射します。脂肪細胞へぼつぼつと穴をあけるように破壊し、脂肪細胞を減らしていきます。よってショット数(照射の回数)が多ければ多いほど、より多くの脂肪細胞が溶けるため皮下脂肪が減少します。しかし1回で破壊できる脂肪細胞には限りがあることと、熱照射を重ねすぎることで火傷のリスクが高まってしまいます。例えば顎下の脂肪へのアプローチでは、月に1回のペースで3~5回1クール(目に見えて効果がわかる回数の目安)が必要と言われています。これは機種によって異なります。
破壊された脂肪細胞はどうなるのか?
白血球の一種であるマクロファージによって食べられていきます。そして徐々に消化され、体外に排出されることで取り除かれていきます。
脂肪に限って考えると、その他にも脂肪を減らす治療はたくさん種類があります。例えば、脂肪吸引や脂肪冷却マシーン、脂肪溶解注射などです。どの箇所の脂肪なのか?どの程度の脂肪の量なのか?どれくらい減らしたいのかによって適した治療は異なります。
③真皮層の衰え
たるみの3つ目の原因は真皮の衰えです。
真皮では、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸といった肌の弾力を保つ上で欠かせないたんぱく質が作られています。加齢によってこれらが減少すると、たるみの原因になります。

コラーゲン(肌のハリ)
真皮の大半(70~90%)はコラーゲンで占められています。コラーゲンはお肌のハリに最も影響を与える「膠原線維(こうげんせんい)」と呼ばれるたんぱく質で、3重のらせん構造で真皮の中を網目状に巡らされている伸縮性が少ない強靭な線維です。
お肌のハリにはある程度のお肌の強さが必要ですが、それをもたらしているのがコラーゲンです。
その中で最も多いのがⅠ型のコラーゲンです。肌の柔らかさを保つのがⅢ型コラーゲンです。また、表皮と真皮の間にあって、しっかりそれぞれを密着させているのがⅣ型コラーゲンです。いずれも肌のハリをキープするために大切です。
ハイフに限らず、肌のハリ艶を出す治療は、真皮に何らかの刺激を加えることで(ハイフであれば熱損傷)、コラーゲン生成を促すといった仕組みが多いです。
エラスチン(肌の弾力)
一方、エラスチンは真皮の2~3%しかありませんが、コラーゲンより柔らかい弾力のあるたんぱく質です。エラスチンは、その性質から「弾性線維」と呼ばれます。エラスチンは、繊維状のコラーゲンをしっかり繋ぎとめるバンドのような働きがあります。
ヒアルロン酸(肌の潤い)
ヒアルロン酸は、細胞同士を繋ぎとめるゼリー状の物質です。ヒアルロン酸が1gあるだけで6Lもの水分を蓄えられるほどの保水力があり、大まかに言うと「肌の潤い」に影響している成分です。真皮内ではコラーゲンやエラスチンの隙間を埋め尽くすように存在して、肌の土台を支えてくれます。
線維芽細胞
そしてこれら3つの成分を作り出しているのが線維芽細胞です。線維芽細胞が活発に働くことで、これらの成分の新陳代謝がスムーズに行われ、ふっくらと弾力のある健康的な肌を保てるのです。
また、線維芽細胞の働きは美肌成分の生成だけではありません。血管の健康状態を守ったり、美肌に必要な女性ホルモンを作ったりもします。肌が傷ついた際は、傷ついた部位へと移動してコラーゲンの生成量を増やし、傷の治癒を早めてくれます。
しかし線維芽細胞の増殖力は40代で20代の頃の半分以下にまでなることが分かっています。そうなると美容成分(コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸)が満足に供給されなくなり、シワやたるみが発生しやすい肌になります。線維芽細胞を刺激してこれらの成分を増やしたり、線維芽細胞自体を増やす治療もありますので、また別の記事で紹介します。
真皮層へのアプローチ

ハイフでは筋膜へのアプローチと真皮の深い層(脂肪が大半である皮下組織のすぐ手前)へのアプローチがセットになっている機種がほとんどです。
最初に一番深い筋膜の層に照射して土台を引き締め、次に真皮の深い層一帯に熱を加えることで、コラーゲンを生成します。
ハイフの効果は約1ヵ月後にピークと言われるのは、熱損傷からコラーゲン生成までタイムラグがあるからです。筋膜への照射ではある程度の即時効果があると言われていますが、真皮の深い層に関しては効果の最大まで1か月程必要です。効果の持続は3~6か月と言われています。
一度受けると永久的な効果のある機械治療はありませんが、様々な治療の中では比較的持続期間が長くコストパフォーマンスに優れた治療と言えそうですね。ハイフの料金に関しては別の記事で書きたいと思います。

ここまでは、たるみの原因とそれに対するハイフのアプローチを説明しました。
他にも、更に皮膚に近い層(真皮の浅い層)への照射ができる機種があります。
真皮の浅い層への照射ができる機種は、ウルトラフォーマー3の「ハイフシャワー」やソノクイーンのなどがあります。こちらはたるみ毛穴や小じわを引き締めるスキンタイトニング効果で肌質改善ができるモードです。
毛穴の中でも「たるみ毛穴」に関しては、ハイフのような高熱のエネルギーを加えて引き締める治療が適していると言われています。真皮の浅い層へのハイフであれば痛みがほとんどなく、赤みも出ないことが特徴です。
また浅い層への照射のため、目周りの細かい部分へも照射が可能です。目の開きや目周りの小じわが気になる方で、いきなり手術や注射は抵抗がある方はかなり試しやすい治療です。直後から効果が実感できます。1か月に1回の照射が可能です。肌は常に入れ替わっているので、定期的なメンテナンスが良いのではないでしょうか。
ハイフの治療の流れ

続いてハイフの治療の流れを説明します。せっかく美容クリニックで治療を受けるのですから、有意義な時間になるよう詳細に記載します。大体どのクリニックも治療までの流れは似ていますがクリニックによって若干異なる可能性がございます。
カウンセリング・診察
治療の前にカウンセリングや診察を受けます。「どの箇所に対して」「どんな悩みがあり」「どんなふうに変わってほしいか」を伝えるとよいでしょう。
HIFUは目の周りやほうれい線、首などにも照射することができますから、どこを改善したいのか、希望をしっかり伝えましょう。
※妊娠中や授乳中の人、皮膚に傷がある人や日焼けをしている人、顔に金の糸を入れている人などは施術を受けることができませんのでご注意ください。
また最近ではカウンセリングと診察は無料のクリニックが増えてきています。美容を専門とするドクターやスタッフに相談する機会は中々ないですよね。せっかくなのでどんどん利用してみましょう。
クリニックによっては治療ごとの症例写真を掲載しているところがあります。治療をするからにはどの程度の効果が期待できるか目で見て把握することが大切です。症例の確認の方法としては、事前にホームページを見たり、ホームページ内にインスタグラムやTikTokにアクセスする方法がありますyoutubeも面白いですよ。
治療を受ける
ハイフはジェルを塗って治療を開始します。所要時間は、治療範囲によって異なりますが、これまで筆者がハイフを受けた際の大体の所要時間はこちらです。
- 全顔 約40分
- 全顔+顎下+首 約60分
- 真皮の浅い層への照射 10分~15分
- 顎下の脂肪への照射 10分~15分
痛みが心配な方の対処法:
まずは治療をしてくださる方に、痛みに弱いことを申告しましょう。様子を見ながら照射してくれると思います。
治療中は筋肉に痛みを感じたり、骨に響くように感じる人もいますが、個人差があります。特に歯の治療をしているときは痛みを感じましたが、クリニックによっては口の内側にコットンを噛ませてくれたところがあり、多少は緩和できました。
基本的には麻酔は不要な治療です。麻酔が不要なことは前提として、どうしても痛みが心配という方は、笑気麻酔を利用しながら治療を受けるのも一つの方法です。筆者は痛みにかなり弱く使用したことがあります。大体1万円~3万円ほどのオプションでしょうか。予約状況によっては使用できないことがあったため、必要な方は笑気麻酔を使用できるか問い合わせると良いでしょう。
ちなみに、静脈麻酔で眠った状態でハイフを受けることはお勧めしません…。昨今では静脈麻酔とハイフを併用した結果、意識がない中で顔や首に火傷を負ってしまったケースがあるとニュースで拝見しました。勧められた場合は筆者ならかなり怪しみますし、知識を疑います。
また、表面に塗るタイプの麻酔もほとんど意味を成しません。表面麻酔というだけあって、皮膚の表層にしか効果がなく、ハイフ自体が筋膜や真皮の深い層へ熱照射を行う治療だからです。
オプションにして2000円~5000円程かと思いますが、その予算があれば別治療に回す方が賢明です。どうしても麻酔が必要な方は、笑気麻酔ができるか問い合わせると良いでしょう。
術後のケア
治療後はすぐにメイクできます。ただし、中にはほてりや赤みが出る人もいます。冷やすと症状が和らぎますが、冷やしすぎてしまうと効果を実感しにくくなることがあるようです。また、治療後に飲酒や入浴、運動などの代謝が上がる行動をすること自体は問題ないようです。日常生活で気を付けることはほとんどないのですが、ほてりが出ている場合は症状が悪化する可能性があるので、飲酒や入浴、激しい運動は避けた方が無難です。
注意点
- 術後のしびれや筋肉痛のような違和感 時間とともに回復すると言われています。
- やけどのリスク 基本の照射であれば問題ないのですが、リスクとして0ではないです。
- 腫れるリスク 熱損傷が起きるため、一時的に腫れるがありますが時間とともに引きます。
- 赤みが出るリスク 直後に火照ったような赤みがでることがありますが比較的すぐ回復します。

美容医療は効果が期待できる半面、リスクも伴います。リスク面もしっかり説明した上で、効果と安全性どちらも考えた治療を行ってくれるクリニックを選びましょう。